2011年7月3日日曜日

私の名詞 Armchair Traveller の巻 2

前回は、armchair traveller について、勢いあまって、いきなり映像による armchair traveller にまで行ってしまいました。本来の armchair traveller は、本を読んで「旅をする」人のことです。言ってみれば、virtual traveller ですね。
では、どいう本を読んでいたか、です。
日本人なら『奥の細道』を知らない人はいないでしょう。芭蕉に限らず、文才のある人は、旅をすると、旅をしながら、あるいは、旅の後に、「旅日記」とか「紀行文」という形で、その旅の記録を後世にのこしました。
日本で有名なのは、古くは、『土佐日記』『十六夜日記』があります。『伊勢物語』は、旅日記ではありませんが、第九巻の「東下り」は、三河の国への旅の話で、在原業平の有名な「からごろも 着つつなれにし つましあれば  はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」は、その旅の時に詠んだものですね。
芭蕉には、『更科紀行』『野ざらし紀行』もありますね。江戸時代には、弥次さん喜多さんのお伊勢参りの『東海道中膝栗毛』が、当時のベストセラーになってます。
げんだいでは、小田実『なんでもみてやろう』、北杜夫『どくとるマンボウ航海記』、阿川弘之『南蛮阿房列車』、司馬遼太郎『街道をゆく』などがありますが、これらはみんな作家の筆によるものですね。
海外では、古くは、孫悟空が活躍する『西遊記』や、その基となった玄奘『大唐西域記』が、日本でも有名です。
マルコ・ポーロ、『東方見聞録』は、読んだことのない人でも名前くらいは知っているでしょう。
ゲーテの『イタリア紀行』、モンテーニュのイタリア旅行の記録『イタリア旅行記』も当時広く読まれました。
英国の詩人バイロンも、ポルトガル、スペイン、ギリシャなどを旅をものした『チャイルド・ハロルドの巡礼』を出版しています。
ダーウィンの『ビーグル号航海記』も一種の「旅行記」と言えるでしょう。一般の人は、あまり知らないでしょうが、人類学者のクロード・レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』は、Wiki によれば、
1930年代のブラジルでの旅の記録をまとめた紀行文だが、その文章にちりばめられた思想、特に優れた未開社会の分析と、ヨーロッパ中心主義に対する批判により後に本書はセンセーショナルな評価を受け、文化人類学、また構造主義におけるバイブルのひとつとなる。また人文科学にも大きな影響を与えた。
という有名な本です。
作詞・永六輔 作曲・中村八大 歌・ジェリー藤尾の『遠くへ行きたい』という歌があります。
どこか遠くへ行きたい 愛する人と巡り合いたい
いつの日か幸せを 愛し合い信じ合い
どこか遠くへ行きたい 愛する人と巡り合いたい
夢はるか一人旅 遠い街 遠い海
どこか遠くへ行きたい 知らない海をながめていたい
どこか遠くへ行きたい 知らない街を歩いてみたい

人間って、誰しもそういう願望を持つことがあるでしょう。しかし、実際に遠くへ旅することは、特に昔はそう簡単には出来ませんでした。
そこで、実際に旅に出る代わりに、armchair に座って、「旅日記」や「紀行文」を読んで、「遠くへ行った」気になっていたわけです。

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